「いきいき社会貢献」では、のっぷとティアが社会貢献活動に取り組む岡山の企業を取材します。
第33回は、シームスブレインズ株式会社(以下、シームスブレインズ)におじゃましてお話を伺いました。
なお、内容は取材当時のものです。
毎年2月第3土曜に西大寺観音院(東区西大寺中)で開催され、日本三大奇祭の一つにも数えられる裸まつり、西大寺会陽。
500年以上の伝統を誇り、祭りの時期には県内外や海外からも大勢の人が訪れます。
そんな西大寺に本社を置くシームスブレインズ(東区西大寺中)の田中俊実代表取締役社長は、西大寺観音院の行事を裏方としてサポートする「院内世話役」、また(一社)西大寺活性化協議会などとして地域おこしに携わっています。
シームスブレインズのメイン事業は、私立学校向けの校務支援システムの開発・販売・サポートです。現在、全国159の学校で導入されています。
田中社長「わが社のシステム『シームス』は、テストの結果を観点別に評価して、成績に反映させる…といった一般的な事務処理だけでなく、一人ひとりの生徒の状況や指導記録を、関わるすべての教員が共有できるというもの。
『シームス』によって情報共有することで、先生同士が連携しながら生徒の状態に気を配ったり、一人ひとりと向き合うことのできる環境を提供しています。この原型となったのは岡山学芸館高校(東区西大寺上)が2003年に開発したシステムで、当時私がいた会社で依頼を受けて商品化しました。」
新店やイベント情報など、地域の話題を集めた情報プラットフォーム「まいぷれ」の運営も行っています。「まいぷれ」は市区町村単位でのフランチャイズ制で、シームスブレインズでは「岡山市北区」「岡山市中区・南区」「岡山市東区・瀬戸内市」という3つのページを管理しています。
田中社長「まいぷれ運営を始めた2017年当時、岡山学芸館高校を除けば私たちの顧客は岡山におらず、地元の人たちとの繋がりをつくりたいと始めました。私は、地域の価値を見出して高めていく、地域の人が地元のことをよく知ることこそ地域活性化だと思っています。加えて、いまはインターネットで情報収集する時代ですよね。『まいぷれ』による情報発信で、何か地元に貢献できるのではと考えました。
『まいぷれ』事業は、2人のスタッフを中心にエリアの話題を取材して掲載しています。
有料会員になっていただくと店舗や施設の情報をブログ的に発信できたりもしますが、会員でなくても取材には伺いますし、岡山が発祥の地である『点字ブロック』や、岡山県内の会陽(裸まつり)特集など独自の取材もしています。こういった企画は好評で、『点字ブロック』特集を公開したときはページのアクセス数が全国1位になりましたし、西大寺会陽のある2月にはアクセス数が年間で最も多くなります。
取材にあたっている女性スタッフは、中途半端なことができない質(たち)。
会陽の文献を読みふけり、地域の人に話を聞いたりして徹底的に取材しました。熱心に取り組んでくれるのはありがたいですが、あまり時間を割きすぎても会社的には赤字なので(笑)、こちらがもうやめてくれというくらい。おかげで地元では知られた存在となり、シームスブレインズではなく、『まいぷれさん』と呼ばれるようになりました。」
やがて女性スタッフの活躍ぶりがきっかけで、田中さんに西大寺観音院の「院内世話役」にならないかと声がかかります。「院内世話役」は、会陽をはじめ夏祭りなど、観音院の行事を裏方として支える役割。荷が重いと、一度は断ろうとした田中さんでしたが・・・。
田中社長「話だけでも聞きに来いといわれ、行った先では私が院内世話役になる前提で話が進んでいました(笑)。西大寺で生まれ育った私にとって、西大寺観音院はとても大きな存在。しかも『院内世話役』は完全紹介制で、志願したからといってなることはできません。
これだけまとまったお寺の組織、というのは珍しいですよね。私もそうですが、檀家ではない世話役もたくさんいます。
会陽に向けての諸行事のひとつ、『宝木(しんぎ)』の原木を受け取りに行く『宝木取り』の使者を務めるのも院内世話役で、深夜に西大寺観音院を出発して約4キロ離れた無量寿院(東区広谷)まで、伝統にのっとり道中無言で歩きます。2024年には裃(かみしも)姿の正使を務めました。」
田中社長「ほかにも、歴代の祝い主のところに宝木を預かりにいく『宝木集め』、お香を焚きしめて会陽後にお返しする『宝木返し』など、世話役としての役割は様々。毎年、年末から2月の会陽が終わるまで、本業の方はほとんど仕事になりません。しかし、伝統的な祭りに携われることも、宝木の福が祝い主に届くまでを見届けられるのも、世話役の醍醐味です。」
西大寺には、西大寺観音院をはじめ神社仏閣がたくさんあります。
神社仏閣には宗教としてではなく、地域コミュニティとしての役割があると、田中さんは考えています。
田中社長「ひと昔前は、神社やお寺の境内で地元のおじいちゃん・おばあちゃんが紙芝居を読んでくれたりお菓子をくれたりして、子どもたちはそれが楽しみで通っていた。そこで顔見知りになったり、様々な伝承もなされていたと思うんです。そういったコミュニティの復活に繋がればという思いがあり、地元の神社の総代をやったり、会社がある地域の神社では崇敬会の副会長などもしています。
実は、本社が今の場所に移転できたのも、神社で清掃奉仕をしながら地元の人と雑談していたことがきっかけ。県道37号線の西大寺中二丁目交差点に面し、岡山市街へ行くにも、牛窓へ行くにも起点となる西大寺の一等地だ!とかねてから気になっていましたが、不動産会社のウェブサイトで見るとなにぶん家賃が高い。そんな話をしていると、家主と知り合いだから話を通してくれるというではありませんか。あれよあれよという間に話が進み、不動産会社を介さない分、安く借りられることになりました。これも、神社仏閣がコミュニティとして機能している例といえるのではないでしょうか。」
そうして西大寺に移転してきたとき、関係・交流人口の増加や地域の活性化をめざす「西大寺活性化協議会」が任意団体として発足(現在は一般社団法人)し、『まいぷれ』で情報発信に取り組んでいることから情報発信推進委員長に任命されることに。
田中社長「西大寺は会陽がモンスター級に有名で、やはり西大寺を訪れる人が一番多いのも会陽のある2月。ですが、会陽以外にも西大寺には良いところがいっぱいあります。これまで、西大寺活性化協議会では『いちごサイクル』というレンタサイクルの導入やサイクリングコース・デジタルマップの開発、イベントの企画などをしてきました。」
田中社長「情報発信の一環で、『高校生とつくる こちらラジオ西大寺』(岡山シティエフエムで放送)という番組にも取り組んでいて、2025年4月で4年目に突入します。地元の西大寺高校・岡山学芸館高校の生徒と、地元ゆかりのゲストが登場してトークする番組ですが、この番組のディレクターを務めています。
もともとは1年だけ、という話でしたが、気づいたらこんなに長く・・・ゲストを探してきたり、台本を書いたりと忙しい日々を送っています。放送はもちろん、「まいぷれ」でバックナンバーを公開していますのでぜひ覗いてみてください。」
田中社長「繰り返しになりますが、地域の価値を見出して高めていく、地域の人が地元のことをよく知ることこそ地域活性化だと思っています。
西大寺で生まれ育ちましたが、私自身、様々な活動を通して地元の良さを再発見していますし、西大寺活性化協議会に所属している地域の人たちも、『まいぷれ』を見てくれる人も同じではないでしょうか。良いところを知ると、愛着にもつながると思います。
西大寺活性化協議会の取り組みや、『まいぷれ』の情報をきっかけに外部からの交流・関係人口が増えて、多くの人が西大寺に来てくれたらこんなにありがたいことはないですね。
やはり地域が元気じゃないと、岡山は元気にはなりませんから。住んでみたいまち、住み続けたいまちだと多くの人に思ってもらえるよう、これからも地域に貢献していきたいと思います。」
"まいぷれさん"として地元から親しまれ、信頼される存在になったことは、地域に対する純粋な興味と愛情を持って奉仕している最高の証明!
会社としての献身的な活動と地元への深い愛情が、地域の文化、歴史、そして人々を繋ぐ大切な橋渡しとなっているんだね☆彡